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それは高校卒業を控えた冬のこと。
俺の受験や、息吹の東京行きの日程を考えると、もう俺の部屋でごろごろできる日も限られてきたな、という頃合いだった。いつものように遊ぶ約束をして、俺は部屋で息吹を待っていた。
朝からその日初めての雪が降っていた。
俺たちが生れて以来大雪が降ったことはなかったから、約束を取りやめようとは俺も息吹も考えなかった。
あと数日もない、という気持ちも作用してたんだと思う。
あの、なんでもない幸福を共有できる時間が。
息吹の家がある駅前から、山際にある俺の家に向かう道中には、幹線道路があった。一緒にポットを買いに行った家電量販店がある、あの通りだ。
そこは、頻繁に長距離トラックが通る道でもある。
その日思いがけない大雪で、納期の決まっているドライバーは焦っていた。装備もなかった。
信号機にも雪が積もり、視界は悪く――
いろいろな不運が重なった結果だった。
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