38人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は受験に失敗した。
息吹のいない毎日を、どう過ごしたのか、あまり記憶もない。
それでも、夏の終わり頃には再び勉強を始めた。息吹の死が、俺の人生を歪めたことになってはいけないと思ったからだ。いざ再開してみると、勉強はとても役立った。
なにかに没頭していれば、後悔にさいなまれないで済む。
そしてその年の初雪の日、息吹は俺の前に現れたのだ。
参考書に埋もれる俺を見て「頑張ってるなー。じゃあ俺は頑張ってる奴の横で漫画読もっと」といつもの調子で言った息吹は、事故の日から買い足してなかった雑誌を読んで、
「……こいつ、こんなとこで死ぬとか聞いてない……っ!」
と、盛大に泣いた。
以来、毎年初雪の日になると、息吹は俺の元にやってくる。
最初のコメントを投稿しよう!