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岡田先生がメスを握り、軟骨肉腫のある組織まで展開していく。
「うーん、やっぱりか」
「どうしたんですか、岡田先生」
岡田先生が開いた術野を見ながら唸っているのを、浅村先生が見て状況を確認した。
「いや、画像を見ても生検の結果からも本来ならもっと進行していても良い印象だったんだよ」
「そうなんですか。あまり、進行してないのは良いことじゃないですか」
「まあ、そうなんだけれど。何か違和感なんだよな」
軟骨肉腫の周囲に見たこともないような細い血管が大量にある。何とかがんが生き残ろうと、血管を無理矢理作っているように感じる。
「増殖した血管がかなり多い。何だろうなぁ。まるで、がん組織が無理くり栄養を欲して作ったような」
「確かにそうですね。意図的に栄養を遮断して成長を止められたことに、抗っているような感じですね」
「本来なら化学療法を行なって、がんを引き締めてから手術になるんだけれど、元より大きく成長していなかったからすぐに手術を行えた。しかも、切断ではなく患肢温存で、だ」
岡田先生は、よく分からない、と言った表情を浮かべて浅村先生に話し続ける。
「まあ、いずれにしろ全て取り出さないとな。よし、切除に入ろう。小林先生、バイタルどうですかな」
小林先生はモニターから顔を上げて.「安定していますよ」と応えた。
「じゃあ、切除に入るよ」
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