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血管、神経を避けるように慎重に切り裂いていく。しかし、周囲組織の変性がひどく思ったように手術が進まない。丁寧に慎重にという思いと、予想以上に手こずるこの現状への苛立ちが岡田先生を焦らせていた。
「あぁくそ、どこ切っても出血だな」
「本当ですね。変性がひどい、これでなんでがん組織は大きくなりきれなかったんでしょうね」
止血しても止血しても繰り返される出血。術野がまた血で確認しづらくなってきた。
「中村さん、生食ちょうだい、全部でいい」
生食を術部に流して視野を確保する。その時、何かキラッと光るものが浅村先生の目に映った。
「あれ、今……」
「タック?」
"亜希子、明菜、浅村、俺の声が聞こえるか?俺が組織の癒着の隙間を探す。そうしたら、執刀医にその場所を伝えてくれ"
「タック、なんであなたがそこに……」
"説明は後だ亜希子。今は、和平の事だけ考えよう"
タックはそう言うと癒着の状態を触って確認していく。
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