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岡田先生はふっと笑顔を浮かべた後、血管を結紮していく。
"さすがだな、フロウ"
"当たり前でしょ。あたしの優秀さがあってこその、和平の命なんだからね"
ツインテールを揺らしながら、清水先生の右手に向かってドヤ顔をしている。
出血が一気に少なくなり、また手術のスピードがあがる。切れの悪くなったメスの刃の交換を頼んでいる岡田先生、術野をできるだけ確保できるように鉤をひく浅村先生、麻酔やバイタルサインの確認をしている小林先生、先生たちの手元を見て、次に使う道具を適切なタイミングで手渡す中村さん。みんなの表情は、先ほどから比べると余裕が見え始めていた。
軟骨肉腫が完全に目視できる様になった頃、すぐ近くにキラキラ光る何かがあった。
「浅村先生、あれってもしかして」
中村さんが小さな声で、浅村先生に話し掛ける。
「うん、おそらくそうだと思う」
そこには、ロン毛でキツネ目の男の子が小さな剣の様なものを振り回していた。
"キル、ありがとう。もう大丈夫だ"
"ん、タックか。もう大丈夫とは何だ"
"なんかさぁ、やっと手術で全部取り除くんだってさ"
"フロウか。お前がそこにいると言うことは、俺の役目も終わりって事だな"
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