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夜八時からZoomを使って、北三中出身の仲良しメンバーでオンライン新年会をする。発起人は北三中で生徒会長までやっていた三井香奈ちゃん。とても頭の良い子で、私じゃ偏差値の意味で全然手の届かない有名私立高校に進学した。
そんな彼女がLINEのグループで、今年はみんなで集まる新年会は出来ないから『じゃあ、代わりにオンライン新年会はどうかしら?』と、言い出して『イイね』『イイね』『アリかも』『神だね』『三井神宮建立確定案件』とみんなの賛同を集めたのだ。
去年も一昨年もこの大人数仲良しグループで、声を掛けあって街中にある神社に初詣に行ったあと、新年会をしたのだ。三井さんのお家は古いけど広い豪邸で、お座敷には十人以上入れる。あまりに立派なお家で、またご両親もなんだかお上品なので、日頃気楽に遊びに行くのはちょっと気が引けるお家なのだけれど、新年会には助かる。
今年――二〇二一年のお正月は私たちの住む県も医療崩壊目前。コロナ警戒体制ということもあり「私たちの新年会も自粛しないと仕方ないよね」ということになった。高校からも「冬休み期間中に大人数で会うことは自粛するように」とお達しがあったから仕方ない。いつもの新年会は中止になったけれど、そこで頭の良い三井さんが代替案としてZoomでの新年会を提案したのだ。
そして作られたオンライン新年会用のLINEグループで樹里子が言い出した。
『あ、オンラインなら遠くの人も参加できんじゃない? 北海道に引っ越しちゃった志築くんとかさ〜』
そのメッセージを見た瞬間、あまりの衝撃に私の頭の中に沢山の星が超高速で北極星を中心にくるくると回りだし、突然飛んできたキラーパスに、私の理性はキルされ吹き飛んだ。急激に上昇した心拍に私は部屋のベッドに倒れ込む。
待って、待って、待って、待って、待って〜! 樹里子なにそれ〜!
エジソンもびっくりな発明か、ジョブスもびっくりな着想か。その発想はなかった! そっか、オンライン新年会なら、距離なんて関係ないんだ!
私の窓の外にはいつも北極星が浮かんでいて、その先に彼が中学卒業と共に引っ越していった北海道の大地がある。その空を頬杖を突いたまま、眺めた。
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