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北の方向。その方角に真っ直ぐ進めば、北海道。志築くんが来年には行ってしまう場所。そう思うと、なんだかどうしようもなく、その星が恨めしくなった。大好きだった星なのに。――でも、北極星にとってみたら「いや、僕に言われても」って感じなんだろうな。――でも、さみしいな。
「大丈夫? 新川さん?」
「う……うん。全然、大丈夫だよ?」
気づけばまぶたが熱くなって、涙が溢れそうになっていた。誤魔化すようにコートの袖で目元を拭う。滲んでいた北極星をまた見上げた。
「高校からは離れ離れだけどさ。僕は北極星の方角できっと頑張っているから。卒業したら、これまでみたいには会えないけどさ、いつまでも友達っていうことで、いてよ」
「――うん、そうだね」
彼は手袋を外して小指を出して、私はその指に自分の小指を絡めた。それは約束。
残りの中学生活はあっという間で、受験を終えた私たちは北三中を卒業した。
卒業式の日に告白しようかどうか迷ったけれど、付き合えたとしても遠く離れた会えない遠距離恋愛に耐えられる自信は全然なくて、結局、告白はしなかった。
でも特別な友達だったってことは伝えたかったから。お別れのプレゼントを送ることにした。手渡したのは北極星のストラップ。北極星をモチーフにしたキラキラした宝石みたいな飾りの付いたストラップ。
「ありがとう! 大切にするよ」
「うん。北海道でも――元気でね!」
それはお揃いのストラップ。志築くんにも見せたら「あ、お揃いなんだ」って照れたように微笑んでくれた。きっと、ほんの少しだけ、思いは伝わったんだと思う。
でもそれでおしまい。それで十分。四月が始まり、高校進学の準備が慌ただしくなる中、志築くんは北海道へと引っ越していった。
それから二年。私は志築くんの顔を一度も見ていない。
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