Zoomに浮かぶポラリス

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 ノートパソコンの脇に北極星(ポラリス)のストラップをそっと置く。あの日から結局一度も使っていないから、新品同然だ。通学カバンに付けようかな、とか初めは少し思ったけれど、勿体なくてやめた。無くしたりするのは、絶対に嫌だし。  エンターキーを押してパソコンの画面をスリープ状態から復帰させる。ログインすると家族パソコンならではのアイコンがとっ散らかったデスクトップが現れる。その中からZoomのアイコンを探す。北の夜空から北極星(ポラリス)を探すみたいに。アイコンをダブルクリックするとミーティングIDを入力するウィンドウが開いた。  ノートパソコンの右脇には北極星(ポラリス)のストラップとスマートフォン、左脇には温かい紅茶の入ったマグカップ。さあ、準備は万端だ。  その時、スマートフォンがバイブで震えた。LINEに新着のメッセージ。ホスト役の香奈からだ。 『始めるよ〜! Zoomに入ってくださーい!』  どんどんと既読がついていく。敬礼した牛のスタンプを投げたのは樹里子だ。追いかけるように数人がスタンプ。  テンキーをぎこちなく叩いて、ミーティングIDを入力する。クリックすると一瞬の待ち時間があって、今度はパスワードを求められたので入力。  するとしばらくの待ち時間があって、Zoomのウィンドウが開いた。黒い背景に次々とならぶ友人たちの名前もしくはビデオ画像。香奈に樹里子。それに同じクラスだった何人もの友人。八人くらいが入った。志築くんの名前はまだない。  どうしたのかな? ちょっと遅れるのかな? だめだ。みんなで集まる新年会なのに、頭はもう、志築くんのことで一杯だ。 「みんな入れた〜? うーん、予定よりまだ三人くらい少ないかな? 誰がまだだろ?」  司会みたいに香奈がマイク越しに発言する。さすが生徒会長。なんだか教室の前でホームルームを仕切っていた時の彼女を思い出す。高校生になっても変わらないな。  樹里子が「志築くんも、まだかもー」と発言。やっぱりまだだよね?  その時、それぞれの顔を写す枠が動いて、最後の部分に新しい黒枠が現れた。「しづき」の三文字。あ、志築くんだ。
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