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北向きの窓ガラスから夜空を見上げると北極星が見える。
我が家はちょっと田舎にあるから夜空には沢山の星が散らばって見える。都会じゃこうはいかないんだろうな、と机の上にノートパソコンを開けてから窓側に向かって肘を突いた。
新年の家族行事も一通り終わって、恒例のこたつで寝正月なお笑い番組も見終わった。一月二日の夕食後、高校生になってから貰えた自分の部屋で一人になって、息を吐く。約束の時間までの待機。
『美智〜! 九時半までだかんね〜! 私も大学のレポートやんなきゃなんだし〜!』
「分かってるよー! ちゃんと返すから〜」
階段の下からお姉ちゃんの声。自分のノートパソコンくらい下宿から持って帰って来てほしいものだ。「重かった」とか理由にならなくない? 我が家にパソコンはノートパソコン一台しかないのだから、奪い合いが激化する。お姉ちゃんが実家に帰ってくるのは別に良いのだけれどね。
星空が綺麗なことは山の上にあるこの街の魅力。家の前から南に見下ろす都会の光だって綺麗だ。私の部屋は北向きだから見えるのは山林とその向こうの夜空だけ。ずっと先の星空。それもとても綺麗で好き。その中でも変わらず北を指し示す星は――北極星。
スマートフォンを開いた。「北三中ぐるーぷ新年会☆」って名前のLINEグループにまた未読が十五件も溜まっている。みんな我慢できなさすぎだよ。開いてみると牛が輪切りにされているスタンプ(干支は丑だけど、それ縁起的にどうなの!?)とか、「ちょ、やめて、草」とか、一日遅れの「あけおめ〜☆」とか、結構どうでも良いメッセージばっかりだった。とりあえずスワイプして既読を付ける。
その上には大切なメッセージ。
ZoomのURLとミーティングIDにパスワード。Zoomは春先に高校が頑張ってリモート授業をやろうとした時に、使ったきりだ。でもまぁ、多分大丈夫。お昼に樹里子とも試してみたから。
さらにその上にはもっと大切なメッセージ。
『しづき悠真がグループに参加しました。』
そのメッセージをついつい何度も確認してしまう。ついつい頬が熱くなる。暖房を効かせ過ぎているからじゃない。体がぶるっと震えた。朝から雪が降っていて底冷えするからだけじゃない。志築くんにもうすぐ会えるからだ。
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