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ふと、じゃあ藤堂は本命の彼女には痛みを与えず優しく甘いセックスをするのだろうかと思ったが、そんな姿は想像すら難しかった。
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「あ!」
久しぶりにゼミ室に行くと、珍しい人物が出迎えてくれた。
「お、久しぶりだな」
ゼミ室の中心にあるテーブルに座って本を読んでいた芹沢さんが、僕に気付くと鷹揚に手を上げてくれた。
院生の芹沢さんとは、ゼミの先生が一緒なので時々こうしてゼミ室で会うのだが、彼とは話が合うので僕は密かにそれが楽しみだった。
「お久しぶりです、芹沢さん」
僕は頭を下げてから、彼の横に座った。
「あ、その本、面白いですよね。最近、先生がゼミ室に入荷してくれたんですよ」
「やっぱり最近入った本か。見掛けない本だなと思って。題名見た時に樫原も絶対読んでいると思った」
落ち着きある笑みでそう言われ嬉しくなった。
やっぱり彼とは趣味が合う。
だから話していて面白い。
精悍な顔立ちで女の子にモテそうだが、真面目で寡黙すぎるために実際はあまりモテないそうだ。
だが同性としてはそこがまた好ましい。
また正義感が強く、ひったくりを捕まえたりだとか、道で倒れたおばあさんを病院までおぶって運んだりだとか、カツアゲを止めたりだとか、そんな漫画みたいな逸話を多く持っている。
しかも本人は「そのくらい普通だろう」と言ってその逸話をやってのけているのだから、本当に面白い人だと思う。
気が合う上にそんな人柄だから、僕の中では彼に対して好感と尊敬しかないわけで、彼とこうして時々会えると自然頬が緩んでしまう。
しばらく最近買った本などについて話していると、ゼミ室に好感と尊敬とは真逆に位置する藤堂がやって来た。
せっかくの楽しい時間に最悪な奴が来てしまったと内心、顔を顰める。
藤堂の方も、僕たちの姿を認めるとあからさまに眉を顰めた。
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