尾久の栄依子ちゃんシリーズ 栄依子ちゃんのお正月

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新しい服に着替えて顔を洗い お年玉をもらい(⌒∇⌒) おせちを祝った後 初詣に行きます。 元日は近所の尾久八幡に行くことが多かったが ワカは、神田の生まれ育ち、 自分は「神田明神の氏子」 と自負しているので 尾久八幡には 子供たちだけで行くことが多かったのです。 家族そろっての初詣は浅草の観音様。 2日か3日に行きます。 円タク… (都内なら1円均一でどこまでも乗れるタクシー) に乗って行くか 都電(チンチン電車)で三ノ輪まで行って 龍泉寺を通って土手通りを浅草まで歩きます。 途中通り過ぎる「新吉原」の裏門は 立派な門松に日の丸を「ぶっ交え」に立て 通りには、紅白の繭玉が枝垂桜のように飾られています。 その下は、 年末のボーナスで懐の暖かい男たちで 賑わっていました。 さて、坂井家は 13才、女学校に上がったばかりの豊子を筆頭に 栄依子、敏子、昌子の4人姉妹 それぞれ振袖の晴れ着。 おかっぱ頭に大きなリボンをのせて ビロードの鼻緒の塗りの下駄。 一番チビの昌子だけ 鈴の入ったポックリ(祇園の舞妓が履いてるような 木をくり抜いたコッポリ下駄を、 東京ではポックリと呼びます。) を履いて にぎやかな行列です。 藤平はこれを見るのが大好きで 娘たちを着飾らせ 長屋の前や 本町通りを遠回りして 店子や知り合いの人々に新年あいさつしながら ぞろぞろ、行列して歩くのでした。 大人も今日はよそ行きです。 藤平は大島の「おつい」(着物と羽織の揃物) ケープのついたコートを羽織り ツイードのハンチング。 いかにも職人の親方、です。 ワカは紫の小紋に 漆の絵羽(柄付きの羽織) 帯もいつもは「お貝の口」だが 今日は銀ねずの袋帯を すっきり小さめの「お太鼓」に締めています。 小柄で色の浅黒いワカでしたが 細面で首が長いので、すっきり小粋に見えました。
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