尾久の栄依子ちゃんシリーズ 栄依子ちゃんのお正月

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さあ、浅草公園のあたりまでくると もうすごい人出。 松屋の前を曲がって馬車道り いつもの倍は出店が出ています。 いちいち覗いて見たいけど まずはお参りです。 仲見世通りは(スリが出るから)避けて 新仲見世通りを遠回りして境内に。 「おかあさん! カメに餌をあげたい」 1人が言うと、みんなが言い出しました。 観音裏の瓢箪池にはカメがいっぱい居て、 近くにおじさんが餌を売っているのです。 カメのえさはアルミの小皿に入って1銭。 「不衛生ですよ、だめだめ」 ワカが言うと、藤平が 「縁起モンだ、やってきな」 と、小銭を出してくれました。 ところが池にカメたちがいない! 見回すと、 「放生亀」という垂れ幕を垂れた台の上に、 大きな箱にウヨウヨ入れられている。 箱の中で亀は ひしめき合い 折り重なって じたばた暴れたり あるいは諦めたようにじっとしている。 箱の向こうには、 いつも餌を売ってるおじさんが、すまして居ました。 3銭払うと一匹出してアルミの皿に載せてくれます。 それをそうっと池まで運んで逃がすのです。 こうすると、命を助けたと言うことで コウトク(功徳)が積める。 これを、「放生(ホウジョウ)」と言います。 何のことはない。 翌朝には、 カメたちは又おじさんに捕まえられて箱に入れられ 子供がそれを逃がすのに3銭払い おじさんの飲み代が増える、というスンポウです。 縁日や正月など人出の多い時 これが出ます。 カメとおじさんは一蓮托生。 カメも助けるがおじさんも助けるから 「コウトク」は確かに積めるのかもしれない。  
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