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「いい加減、ちゃんとしなきゃなあ」
不意に、自分の部屋の郵便受けが、溢れ放題になっているのが、目に留まった。大きなため息をひとつついて、乱暴につっこまれた広告を引っこ抜く。
そのとき、一枚の手紙が、はらりと宙を舞った。年賀状さえ、デジタルになって久しいこの時代に、手紙なんて代物を目にしたのは何年ぶりだろうか。空中でそれを掴み取り、差出人を見ると、「西野江瀬菜」とあった。
「せ、瀬菜!?」
もう彼女に対する気持ちをどう処理していいか分からない。けれど、それを読まずに捨てることなんてできず。凍てつく寒さのせいで、家の中に入ってもまだ震える手で手紙を開封する。紙面に懐かしい丸文字が並んでいた。
”端末が使えなくなったので、時代遅れの手紙なんて書いてみました。あなたからすれば、最初から最後まで意味分からないと思うけど、これが私の気持ちだから読んでくれたら嬉しいです。
あなたの他に、私のことを心の底から思ってくれる人はいませんでした。気の利いたことを言ってくれる人なら沢山いたけれど、みんなひとつも考えずにさらりと話すものだから薄っぺらく感じてしまう。しっかりと考えてから、私の目を見て言ってくれるあなたのことが、好きでした。
だから、あなたの前から消えようと思います。あのとき、「一生、騙していて欲しいなんて言えない」って、あなたの口から聞いたから決断ができました。
さようなら、あなたと過ごした時間のことは、ずっと忘れません。”
彼女は、あの日見た映画の主人公と同じ決断をしたというわけだ。戻れるならば、あのときの回答を撤回したい。どうせなら、一生騙していて欲しかった。知りすぎた僕は、声をあげて苦笑いをしながら、手紙を破り捨てた。
GUARDUSは蔓延する詐欺から国民を守るために作られたシステムだ。けれど、真実から僕を守ってはくれなかった。
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