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遺してくれたもの
「なんで、私より先に……。一緒にって…………」
彼氏の実家にある仏壇の前に座り、少女が涙で濡れる顔を両手で隠す。
仏壇に置かれた1枚の写真。それは彼女の恋人・雷人の写真だ。
彼との約束が守れなかった。あともう少しで結婚できたのに…………。
一緒に暮らして、一緒に子供を育て、一緒に歳をとり、一緒に死ぬ。
そんな理想の世界が、彼の持病で消えてしまった。
診断名は聞いていない、最後の最期まで、教えてくれなかった彼氏。
一途な思いを半分こして、中学の時から付き合っていた愛人。
なぜかわからないが、だんだん大きくなっていく、私のお腹。
すると、
――トン……トン……。
何かが私のお腹を叩く感覚がした。
最初親に聞いても、
『ただ単に正月太りしただけじゃないか?』
という言葉しか言ってなかったが、大きく膨らみ始めたのは4ヶ月前から。
家に帰り、私は親の送迎で送ってもらい産婦人科へ。
「先生、よろしくお願いします」
問診等様々な検査を行い、超音波を使った検査もした。
体力があまりないので、全てが終わった時には、疲れきってよろけてしまう。
名前を呼ばれ、先生の部屋へ向かい椅子に座る。ここで言い渡された言葉……。それは、
「咲羅さん、…………しています」
一瞬嬉しくなった、きっとこれは彼氏からの贈り物なんだと彼女は悟った。
このことが本当なら、嘘ではないのなら、今まで一緒にいた雷人と、1歩ずつ踏みしめ歩んだ足跡が生んだ奇跡なんだ。
『妊娠』
それが、彼女に伝えられた言葉だった。
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