ノーマ・レイを探して

尋ね人の記事は、親切心あふれる人々の手によって拡散した。
翌日、ノーマ・レイという言葉がトレンド入りした。
そのうちに好奇心旺盛な人々の手により、新しい情報が付与されていった。

「ノーマ・レイとは何者か、考察してみた」
「ノーマ・レイ、実は日本人の『野間れい』という人物」
「ノーマ・レイは某国スパイの暗号名」
「ノーマ・レイという名のＡＩ、超大国の極秘プロジェクト」
「ノーマ・レイは人ではない？　人知を超えた存在の可能性」
「ノーマ・レイとは……だ」
「ノーマ・レイは……に囚われている」
「ノーマ・レイを解き放つ時が来たのだ」

実に様々な顔を持つ、ノーマ・レイが誕生した。
時には人ではなく、天使や悪魔、アンドロイドや宇宙人でさえあった。
ノーマ・レイごとに物語(ストーリー)が作られ、映像(イメージ)が描かれた。
実体を持たないまま、ＳＮＳ上で産み落とされ紡がれた、架空の物語たちだった。