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2 ゼミの合宿で知り合った矢代明治と、花純は度々会うようになる
花純と南城との関係は、今まで通りに先輩と後輩の間柄で、それ以上には発展しなかった。花純はそれから、恋愛とは無縁の1年を過ごした。
大学3年生の夏、花純は河口湖で行われたゼミの合宿に参加した。もうすぐ始まる教育実習の準備を兼ねた合宿だった。
部屋は二人部屋で、同じ部屋になった女子が、夜になって男子を二人連れてきた。一人は彼女の彼氏らしく、もう一人は矢代明治という同学年の男子だった。花純は面倒臭いなと思いながら、皆に付き合ってトランプをしていた。その内に、付き合っている同士がいちゃつき始めたので、花純は部屋を出た。外の庭で退屈にしていると、矢代が声を掛けてきた。
「ああ言うの、嫌ですよね!何かだしに使われたようで、参りました。」
「矢代君もそう思ったんだ。良かった、私だけでなくて。」
二人は置かれた環境が一致した事で、話が弾み意気投合した。しばらくして部屋に戻ると、同部屋の彼女は寝ていた。花純も布団に入り寝ていると、隣の布団から妙な声が漏れ聞こえてきた。
「駄目だよ、坂上さんが起きちゃう!いやだ、そんな事をしたら…。」
「大丈夫だよ!彼女はぐっすり眠ってるみたいだから、良いだろ?」
どうやら夜ばいに彼氏が来たらしく、花純はじっと寝たふりをしていた。
合宿で知り合った矢代明治と、花純は度々会うようになっていた。大学の食堂で一緒に昼食を食べたり、図書館に行き二人で勉強をしたりした。二人とも恋愛には初心な事もあり、友達から脱し切れない関係が続いた。それでも、映画や遊園地にも出掛けるようになり、お互いを異性として意識するようになっていった。
「明治君は、女の子と付き合った経験はあるの?」
「あるけど、高校の時に思い切り振られて、それからはないな。」
花純は、そう言う彼と一緒にいる事で安心感を得ていた。と同時に、正直なところ物足りなさも覚えていた。
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