2 杏は尊と一緒に飲みながら、過去の恋愛経験を語り合う

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2 杏は尊と一緒に飲みながら、過去の恋愛経験を語り合う

 尊は自分の恋愛経験を、酒を飲みながら、高校3年生にさかのぼって語り始めた。 「高校生の時の彼女は、向こうから告白してきて付き合う事になった。1年後輩で、髪が長くて目がくるりとして可愛くて、俺のタイプだった。一緒に勉強したり、映画を観たり、夏にはプールでデートもした。半年ぐらいでキスをしたけど、彼女はその先を許してくれなかった。俺も慣れてないから、どう口説いて良いか分からなくて、その時は純情だったんだな。俺が卒業して離れ離れになって、自然消滅した。」  杏は缶ビールを片手に、彼の話を黙って聞いていた。 「二人目は大学2年の時、バイト先で知り合った女子大の子で、上品な割に行動的な所にほれたのかな。俺から交際を申し込んで、バイトの帰りとか毎日会っていた。彼女は一人で暮らしていて、それをいい事に部屋に行く事が多くなった。キスをしたのも関係を持ったのも、すべて彼女の部屋だった。俺が積極的というよりも、彼女の方がリードしてくれた気がする。」と話している所へ、杏が口を挟んできた。 「その彼女は、尊君が初めてではなかったの?」 「多分。よく分からないけど、俺は気にしてなかったから。それから彼女の部屋に入り浸るようになっていて、そこへ彼女の親が突然訪ねて来た。娘との関係や将来はどうするのかとか、純真無垢の娘をだましたとか言われて、俺はあきれてしまった。彼女は親の前では猫を被りっぱなしで、俺が悪者にされて別れる事になった。」 「へぇー、大変だったね。でも良い思い出なんでしょ!初体験もできたし。」 「終わり方が修羅場だったから、良い思い出にはならないよ。それで、今の彼女とはサークルが一緒で、あとは君が知っている通りだよ。」  尊はすっかり酔って自分の過去をさらけ出し、すっきりとした気分だった。 「彼女はこの部屋に来た事あるの?」と杏は何気なく訊いた。 「1度だけかな。外で会う事が多いしね。さて、杏ちゃんの番だよ!」  杏はトイレに立った後、落ち着いた所で語り出した。 「私は高校2年生の時に、その時の生徒会長と付き合った。彼も女子と交際するのは初めてだったみたいで、純愛そのものだったな。でも、それを破ったのは私で、キスを彼にせがんだのが発端だった。彼が卒業して京都の大学に行ってしまい、夏休みにそれを追って行き、初めての体験をした。」  そこまで語ると、尊は驚いて訊き返していた。 「あっさりと言ったけど、それって彼と初めてしたの?まさか!しかも君から押しかけて行ったの?失礼かもしれないけど、杏ちゃんは処女だと思っていた。」 「本当に失礼だね!処女じゃなくて、お|生憎≪あいにく≫さま!それから彼とはずっと会わなくて、大学に入った時に訪ねて来た。その時に仕方なくもう1回だけして別れたの。あとは尊君が知っての通り、ずっと空き家のままです。」  杏の話が終わる頃には、尊はすっかり酔って寝入っていた。杏は寂しい気持ちを抑え切れず、寝ている彼の唇に軽くキスをして帰った。尊は寝ている振りをして、彼女を心の中で見送った。
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