プロローグ

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 最初にこの視界を体験したときには、今までに味わたことのない不安定な浮遊感に戸惑った。  何度か体験していても、まだ慣れない。  視覚の混乱を避けるため、指揮官は左目を閉じた。  空から俯瞰した景色を鳥のように舞い、指揮官は戦場の状況をじっくり観察した。  これで敵の布陣が一目瞭然だ。  敵の布陣が分かれば、自分が採るべき戦術はイメージしやすい。  「左側に移動してくれ」  指揮官がそういうと、水平移動するように景色が右側に移動する。  視点が左側に移動したのだ。  しばらく視線が左に移動したところで、数名の人影が草むらに隠れているのを見つけた。  敵兵がアンブッシュ(待ち伏せ)している姿だ。  地上からでは全く見えないだろうが、上空からは丸見えだ。  「次は右側だ」  指揮官がそういうと、視点が右側に平行移動する。  ここにも敵兵が潜んでいた。  同じように正面の奥も見て回り、敵の大体の布陣と奇襲部隊の配置を掴んだ。  「ありがとう。大体掴めた」  そう言うと右目の視界が真っ黒になった。右手で隠している視界に戻った。
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