エピローグ

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彼女が足を止める。 足音を立てて追いかけたのだ。 嫌でも気がつくだろう。 彼女が警戒の色を含んだ目で振り返る。 「久しぶり」 私はそう言った。 「髪、切ったの?」 彼女は恥ずかしそうに毛先を触った。 「肩に付いてないからショートかな?」 彼女は笑って頷いた。 「月ちゃんも大人になったね」 彼女が最初に発した言葉だった。 「そんなに変わらないよ」 「そんなことないよ。パンツスーツにアップにまとめた髪。立派な大人。誰かわからなかった」 「私は雪花を見つけたよ」 「本当に、びっくり。変わってない?」 「ううん。変わった。すごく綺麗になった」 「そっか」 私たちは一緒に笑った。 駅前の広場。 私たちの会話なんて喧騒のひとつに過ぎない。 それでも私にとっては何年も待っていた。 「雪花」 「なに?」 私は一歩前に出て彼女の手を取った。 彼女は拒まなかった。 「ずっと探してた」 雪花は笑って言った。 「ずっと待ってた」
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