一人から一人へ

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一人から一人へ

 晴れて良かった。一週間続いた雨が嘘だったかのように雲一つ無い。  せっかく友達の誕生日プレゼントを買うのに、天気が悪かったら、何だか選ぶものも暗くなってしまいそうだ。  今度部活で演奏する曲を一曲リピートで流し、近くのバス停まで一人歩く。自然と歩調が速まる。適度に温まった体には、強めに設定されたバスの暖房は敵だ。背中を汗が伝った。早く目的地に着いて欲しい。少しテンションの設定も高目になっている気がするが、それぐらいプレゼント選びが楽しみなのだ。相手のことを思い浮かべ、相手との会話を思い出す。近くにいない贈り相手が、まるですぐ隣にいるかのような、二人でいるかのような感覚になる。  私とあなただけの時間。そこには他のものは一切入り込まない。
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