EPISODE1 始まり

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大歓声を一身に受けていた彼らはそのまま足を進め、とうとう俺たちの目の前で足を止める。勿論その瞬間食堂中の視線が俺たちに突き刺さった。 うわもう今すぐこの場から去りたい……好青年キャラかなぐり捨てて全力疾走で逃げようかな……。 俺がひっそり自暴自棄になりかけたその時、生徒会長がゆっくりと口を開いた。 「お前が千尋の言っていた転入生か……ふぅん?」 翡翠色の瞳がじっとハルを見つめる。突然話しかけられ戸惑った様子のハルに、少しして彼はふっと鼻で笑った。 「千尋が面白い奴が来たっつーから顔を拝みに来たが……俺はそうは思わねぇな。コイツのどこを気に入ったんだよお前」 「随分な言いようですね。けれど貴方もきっとすぐに気付きますよ、この子の可能性に……」 可能性……?聞こえてきた会話に首を傾げてユズに目を向けるが、彼もきょとんと二人の会話を見守っていた。副会長がハルに恋愛的な意味での好意を抱いているようには見えないが、これはどうなのだろう。 すると副会長が俺たちの方へ向き直り、うっとりとする程綺麗な笑みを浮かべた。 ぐっ、ちょっと待てユズ!お前興奮しすぎて俺の制服の裾めちゃくちゃ引っ張ってんだけどやめてくんない!?伸びる伸びる! 「ハルくんすみません、此奴の言うことはどうか気にしないでください。あの後はきちんと教室まで行けましたか?」 「あ、おう!学園長に教えて貰ったから平気、」 「へぇー!ちーちゃんってばこんな感じがタイプなんだね、詩織」 「ホントー!でもすっごく意外だよね、伊織」 「っうわ!?」 答えようとしたハルの言葉を、副会長の背中から左右にぴょこんと頭を出した双子が遮った。ピンクがかったベージュの髪はそれぞれ右と左の耳下で結っており、彼らが話す度に小さく揺れる。ハルの驚きの声に二人はクスクスと楽しそうに笑った。 「いい反応をありがとう転入生くん!」 「じゃあそんな転入生くんにもアレ、挑戦してもらおうか!」 来たぞ、来たぞ、と隣でうるさいユズの足をこっそり机の下で踏み付ける。黙って存在感消すんだよ俺たちは。どうすんだよついでに目ェ付けられちまったら! 状況が把握出来ていないハルを挟み、にこーっと全力スマイルの双子は声を揃えた。 「「どっちが伊織でどっちが詩織でしょうかゲーム!」」
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