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そもそも、何故俺がこんなにも王道設定に詳しいのかということから説明したい。一つ言っておきたいのは、俺は別に男同士の恋愛模様を見て興奮したり萌えたりする所謂腐男子では無いという事だ。
そもそもの原因は、現在進行形で俺の後ろの席から身を乗り出してこそこそと囁いているコイツ。
「ちょっとちょっと唯!まさかの王道転校生きちゃったよ!!リアル毬藻だよリアル毬藻!!東堂にも名前で呼ばれてたしマジでまんまなんだけど!ハッ!待てよ?教室に来てしまっているということは既に副会長との笑顔指摘イベ終わっちゃった!?うわー!俺ってば腐男子として有るまじき愚行!!」
「ユズちょっとうるさいから黙って」
隣に座って今日貰ったのであろう教科書を確認している皆瀬くんには聞こえない大きさで、しかしかなり鼻息荒く話しかけられる。
やかましいわ、耳元でンな話聞かされる俺の身にもなれバカ。
心の中でそう毒づきながらも表面は苦笑に留めておく。お前寮に戻ったら覚えとけよ。
彼の名前は古賀柚李。寮の同室者で、俺の本性を知っている数少ない中の一人である。元々親同士の仲が良く、物心が着いた時から今に至るまでずぅっと一緒の幼馴染だ。そしてもう完璧にお分かりだろうが、ユズこそが腐男子というやつだ。
ブルージュの髪にグレーの瞳。黙っていれば女の子ウケの良さそうなシュッとしたイケメンだと言うのに、口を開けばこうなのだから仕方が無い。
というかこの高校に入るまでコイツはこの趣味を俺以外にはひた隠しにしていたから、実際に女の子にはモテていた筈だ。毎年バレンタインにはチョコをいくつも貰っていた。
コイツのこの趣味については個人の自由だからどうも思わないが、俺へ布教しようとするのはやめて欲しい。あともうひとつ言わせてもらうなら俺をモデルにBL同人誌とやらを書くんじゃない。俺受けのR-18とかふざけんなてめぇ金とるぞ。
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