新入生歓迎会

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「ほら、口開けな」 「ん、っふぁ」 あ、もうムリ。 いきなり深いキスをかまし、更には今にもおっぱじめそうな雰囲気を醸し出している彼ら。聞こえてきた生々しい喘ぎ声と水音に、とうとう耐えきれなくて耳を塞いだ。 何が悲しくて全く知らん奴らのアレソレを盗み聞かなくてはならないのか。いや知り合いでもかなりキツいが。 未だにうっすらと聞こえる、ガサゴソと身を捩らせる音。さっき顔がちらっと見えたが、女の子の様な顔をした小柄な可愛らしい子とシルバーアッシュの髪が目立つイケメンだった。相も変わらず顔が良い奴しか居ないのかこの学園は。 そんな風に思考を飛ばして現実から逃げてはみたものの、よくよく考えると早くこの場から立ち去らないと本格的にセッ……が始まってしまうのでは無いだろうか。いやいや流石にそれは勘弁してくれ。 「や、待って、外はやだぁ」 アッコレヤバイヤツ! 俺が座り込んで身を隠している木のすぐそばでがさごそと怪しげな音をさせている彼ら。 音を立てない様に近くに置いていた水鉄砲を手繰り寄せ、木に隠れながらゆっくりと立ち上がる。全神経を集中させて、そっとすり足でその場を立ち去ろうとした。しかしその瞬間。 ガサガサッ 「……」 この時ほど自分を殴りたいと思ったことは無い。クソほど邪魔な水鉄砲が植え込みに当たり、大きな物音を立ててしまったのだ。既に木の影からは一歩踏み出しており、きっと、恐らく、あちらからも俺がバッチリ見える位置に立っている。 うん。よし。逃げよう。 一瞬でそう判断した俺は止めてしまった足をまた踏み出そうとして、しかし出来なかった。 「待て」 どうして俺はここで馬鹿みたいに素直に立ち止まってしまうのか。後ろからかけられた声に、反射的に振り向く。 明らかにヤバそうな男が、ヤバそうな笑みを浮かべて俺を見つめていた。
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