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「ッてぇ……!」
ガンッと鈍い音が響き渡り、彼は吐き捨てるように声を漏らした。緩んだ腕から抜け出し直ぐさま距離をとる。痛みからか顔を顰める彼に、後先のことを考えないまま俺は口角を上げて嘲るような表情を向けた。
「あのさァ、悪いけど俺、アンタみたいなクズに簡単にヤラせる程安くないんで」
落ちていた水鉄砲を拾って、彼の心臓に照準を合わせる。
「一昨日来やがれ、ばーーーーか」
その言葉と同時に引き金を引いた。
見事に心臓の位置を撃ち抜いた水。彼は棒立ちのまま瞠目してこちらを見つめていた。
「………」
お互いに無言のまま見つめ合うこと数秒。俺はすんっと表情を無にし、平静を装って今度こそくるりと体を方向転換させた。背中に刺さる視線は痛いほどに感じたが呼び止めてくることはなく、そうしてやっと俺はその場を後にしたのだった。
宛もなくただひたすらに歩みを進める。俺の顔はキリッと普段通り引き締めているものの、頭の中は先程の自身の言動でいっぱいだ。
なんだよ安くないって俺マジで何言っちゃってんのさ!!余りにも人のこと馬鹿にしたような言い方するもんだから怒りのまま言っちゃったけどあの人絶対不良じゃんかよ!しかもかなりヤバイ方!!
どうしようどうしよう、ガッツリ顔合わせてるしもしかして後からお礼参りされたりしない??あの時の頭突きの借り返しに来たぜってボコボコにされたりしない??
恐ろしすぎる未来を想像してぶるりと身を震わせる。
この学園、お金持ち校ではあるもののガラの悪い生徒は一定数存在する。それはまあ、甘やかされ過ぎて育った故にひん曲がってしまった輩だったり、もしくは元々ヤのつくお家が実家の輩だったり、色々だ。そして先程の彼が前者だった場合は金の力を引き合いに面倒な事になりそうだし、後者だった場合はシンプルに命の危機。
「俺……死んだ?」
俺はそっと天を仰いだ。
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