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「生徒会のヤツらめ、アイツら自分たちが参加してないからって滅茶苦茶な事ばっかしやがって……!!」
「きゃー!唯くんー!!」
「唯様待ってくださぁい!」
黄色い悲鳴を背に、全力で走り続ける。俺は顔を歪めて生徒会への愚痴を吐き捨てた。
もう本当にびっくりするくらい追い掛けられる。生徒会と風紀委員会の人達は今回のイベントの運営と警備にあたっているため参加はしていない。ただし景品として貰える権利はどうやら彼らにも使えるらしいから、彼らを狙う人達はひたすら生き残ることを考えているのだろう。
「クッソ……多いなァおい!」
口悪くぼやいてしまったが後ろから必死に俺を追いかける彼らには聞こえていないだろうということで気にしない。あっちに行ってもこっちに行っても出るわ出るわ俺を狙う生徒の大軍。
もうこうなったら絶対に、何があっても、逃げ切ってやるからな!!!
そうして走り続けていると目の前に現れたのは俺の身長よりも高いレンガの壁だ。もうここがどこだか分からないしこの先に何があるのかも知らないが行くしかない。俺は何の躊躇もなく横の茂みに水鉄砲を投げ捨てた。そしてぐんぐんとスピードを上げていく。
「えっ、ちょ、そっちは行き止まり……」
ダンッと地面を蹴ったと同時に壁のへりを掴み、そのままの勢いでぽーんと飛び越える。着地も綺麗に決めて、呆気にとられている後ろの彼らを振り返った。
「ごめん、またね!」
好青年スマイルと共にひらりと手を振って、また走り出した。
……ふぁぁぁぁ!!逃げ切ったーーー!!
誰も追ってきていないことを確認してから徐々にスピードを緩める。胸に広がる達成感と満足感に、俺は思いっきり息を吐き出した。
あの壁を超えるには邪魔だったから水鉄砲は捨ててしまったが、どうせ残り時間も後少し。このまま隠れていれば最後まで生き残ることが出来るだろう。
未だ荒い呼吸を整えながら、ところでここは一体どこだと周囲に意識を向けた。見覚えはある。そのままぐるりと見渡すと目に入ってきたのは……
「植物園……」
綺麗に整備されたレンガの道が、ドーム状のその場所へと続いている。こりゃ勝ち確だな。にやりと口角を引き上げた。
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