2867人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
「よろしくな!えっと……」
「俺、椎名唯。よろしくね皆瀬くん」
キラーンと一発爽やかスマイルをかましつつ内心ではよろしくしたくねぇー!と叫んでいた。
あの後直ぐにHRが終わり、担任も授業ダリィなぁなんて教師として有るまじき言葉を吐きながら去っていった。しかしどうやら転校生あるあるの机を囲んで質問責めイベントは起こらないらしく、皆瀬くんは遠巻きに見られている。
まあその代わりに俺との自己紹介イベントが発生しちゃったんだけどね。
「あ、ハルでいいって!俺も唯って呼んでいいか?」
「ああ、勿論」
あダメだ詰んだコイツ多分良い子タイプの王道だわ。コミュ力高い光属性の王道だわ。勿論なんて言ってんじゃないよ俺。嬉しそうにキラキラした目でこっち見てんじゃないよハルくん。
「へへっ、唯は日本で初めての友達だ!何か嬉しいなぁ」
「日本で……ああそっか、海外にずっと住んでたんだっけ?」
「うん!生まれたのは日本だったんだけど、物心着く前にアメリカにな。だから日本語ちょっと怪しいんだよなーオレ。敬語って苦手」
分厚いレンズと重い前髪に隠されて見えないが、きっところころと表情は変わっているのだろう。想像以上に弾み始めた会話をぶった斬る訳にも行かず、当たり障りのない返答を返していく。
「へぇ、大変なんだね帰国子女ってのも。でも、こうして喋ってても全然違和感ないと思うよ」
「まじ?なんかさー、カタコトになっちまうんだよなー。英語だと敬語だとかタメ口だとかはそんなにはっきり分かれてないから頭こんがらがっちゃって」
………ええ子や。
え、やだ待って、普通にいい子なんだが???見た目ちょっとヤバいけど全然話通じるんだが???
最初のコメントを投稿しよう!