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皆瀬くんええ子ショックを受けながらも、その後は普通に午前中の授業を終えた。授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、途端に教室内は騒がしくなる。昼休憩の時間だ。俺は基本ユズと一緒に食堂か購買で食べているのだが、今日はユズ強っての希望で食堂に行く事になった。
アイツの事だからどうせ食堂イベントとやらを期待しているのだろう。確かなんだったっけ、生徒会役員が転校生を見に来て?双子を見分け?興味を持たれ?最終的に生徒会長からのキス??
確かに今の生徒会はThe王道って感じの性格っぽいけど、あの会長サマが人前でキスなんかするか?双子はまあ、面白ければ何でもOK!って感じだからハルのことを気に入る可能性はあるけど、キスなんかは流石になぁ……。
ぼんやりと考えながら机上の消しカスを集めていると、ユズがにーっこりといい笑顔で近付いてきた。
「唯、はっやく食堂いこーぜ!あ、皆瀬くんもよかったら一緒に行く?場所分かんないっしょ、案内するよ」
「え、いいの!それは助かる!えっと……」
「俺、古賀柚李!よろしく、皆瀬くん」
仲良くしよーぜ、と目を細めた彼はきっと脳内は腐った妄想でいっぱいだ。顕著に現れているわけではないが、昔から一緒だった俺には分かる。あ、ほら今ちょっと口元が緩んだ。
打算だらけのユズの言葉に、しかしハルは嬉しそうに笑っている。知らぬが仏って言うしな……。
ユズも自己紹介を終え、三人並んで食堂へと向かう。やはりハルの個性的すぎる容姿は目立つのか、視線が痛いくらいに集まっているのが分かった。
いつもの倍以上は注目されてんなぁ。自分自身これでも一応顔はいい方だと自覚はしてるし、その証拠に俺は親衛隊持ちだ。ま、そうは言っても生徒会役員の所ほど大規模ってわけじゃないんだけどね。
それに俺は親衛隊とはちゃんと適度に交流してるし、そこまで過激な子達もいない……
「はぁぁぁ?何であんな奴が唯様と一緒にいるわけー???僕の方が絶対可愛いんだけど??」
「俺たちの唯くんの隣歩くならもっと身嗜みに気ぃ使えよあの毬藻野郎……!」
「ねぇ待って死ぬんだけど!?ただでさえ同担拒否なのにアレは病む……」
……あるぇ??おかしいな、過激な子はいないはずなのだけども。
何だかおかしな方向に好かれているような気もするがそれはスルーして、彼らの話題の中心であるハルに話しかけた。
「あー、ごめんね、ハル。嫌な思いさせちゃって」
「?何で唯が謝るんだよ?言ってんのはアイツらで、お前何もしてねぇじゃん」
キョトンとした顔でそう返され、思わず拍子抜けする。ピュア瀬くん……。
「ううん、あの子たち、俺の親衛隊の子たちだからさ。いつもは普通にいい子たちなんけど、今日はちょっとピリピリしてるみたい」
「し、しんえーたい……?」
ごめんねともう一度謝るが、ハルは頭にハテナを浮かべている。するとユズが楽しそうに親衛隊ってのはねー、と口を開いた。
「顔がいい奴らに作られる、ファンクラブみたいなものだよ」
「ファンクラブって……え!?男子校で!?」
「そ!男子校で!ほら、担任の東堂もキャーキャー言われてたっしょ?うちの学園って幼稚舎からのエスカレーター式で、しかも閉鎖的だからさ。もうすんごい多いんだよなー、そういう人達」
カップルも普通にいっぱいいるよーとケラケラ笑いながら言ったユズの言葉にハルは驚愕しているようだった。
「マッジで!すっげ……え、じゃあアイツらが唯の親衛隊ってことは、唯ってちょー人気者ってことじゃん!」
「いやいや、俺なんて全然。一番凄いのは生徒会の親衛隊かな」
「あーあそこはな。役員は全員親衛隊持ちなんだけどさ、会長サマと副会長サマの所の子たちは結構過激派なんだよなー」
「過激派?」
「そっ。会長様たちに近付きすぎると呼び出されんの。制裁って言われてるんだけど、ボコボコにされたり酷いと強姦されたりもある。かなり痛い目見せられるってわけ」
「は、強姦!?ヤバすぎだろそれ……」
「風紀委員会が毎日見回りしてくれてるから未然に防がれる事の方が多いんだけどね。でも被害者はゼロじゃない」
勿論、親衛隊員のみんなが皆そうって訳じゃないから過剰に避け過ぎるのも良くないけど。
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