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◇
「とーちゃーく!」
「ここが食堂だよ。道、覚えられそう?」
「な、なんとか……。でもすっげーなここ!扉ちょーデカいし、なんかキラキラしてる!」
ふぁー!なんて興奮気味にペタペタと扉の装飾を触るハル。心做しか耳としっぽが見える気がしてくる。早く入ろーぜーとニコニコしながら急かしてくるユズに、食堂イベントのことを思い出してため息を吐いた。
もし本当に生徒会役員が来たとして、俺にはなーんにも関係ない事だ。
たださっきも言ったように親衛隊のことを考えると、こんな公の場所でテンプレ的展開によってハルが生徒会に気に入られたりなんかしたら、かなり悲惨な未来が見えてくる事になる。
知らないフリを決め込むつもりだったのに、ハルが悪い奴ではないことを知ってしまったばっかりに良心が痛み始めた。
……が、しかし。
「ま、なるようになるか」
_____俺は考えることを放棄した。
いやだってもう仕方ねーもん!コイツ普通に良い奴だし!!ユズは近くで楽しむ気満々だし!何かあったらその時に考えようぜ作戦で行こう!うん!おっけー!
心の中で結論を出した俺は気持ちを切り替えて、今にも扉を開けて入ってしまいそうなハルを宥める。
「ちょっと待ってハル。心の準備をしてから入った方がいいよ、かなり耳にくるから」
「心の準備……?えーと、よく分かんねーけど、分かった!」
「唯がいるからなー。結構来るぞ」
俺のせいみたいに言うの止めろよ、なんて思いながらも実際そうなので苦笑だけに留める。
「じゃ、開けるよ?」
「おう!」
木製の扉をぐっと押した。
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