EPISODE1 始まり

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EPISODE1 始まり

私立藤ヶ崎学園。都心部からバスに揺られて約二時間、人里離れた広大な敷地に建つ全寮制の学校である。 進学は幼稚舎から高等部までのエスカレーター式であり、人里離れた、とは言っても校舎は驚く程に豪華絢爛で設備も十二分に整っている。 高等部の選抜クラスに至っては偏差値は70を超え、政治家やら医者やら大企業やらのご子息様、つまり将来を背負って立つであろう方々も通う学舎がこの、藤ヶ崎学園なのだ。 ……とまあ、こうして長々と語っては来たが実はこれ、とっても簡単に一言で説明することが出来る。つまりはそう、所謂『王道学園』と言うヤツなのだ。 『王道学園』。ボーイズでラブな関係に萌え、日々ネットで好みの小説を漁りまくっている方々ならば一度は目にしたことがあるであろう学園モノの設定。 俺様キャラの生徒会長から始まり、腹黒副会長にチャラ男会計、はたまたワンコ書記に双子庶務。一匹狼に爽やかくん、それから……なんて、挙げだしたらキリがないが大抵はそんなイケメンキャラクター達が一人の主人公を中心に織り成すラブなお話である。 そして、忘れてはならないのが彼の存在。そう、王道転校生だ。もじゃもじゃの鬘に瓶底メガネと、世紀末かとさえ思えるクソダサファッションがデフォルトの強烈キャラ。 しかしその素顔は誰もが見惚れる美少年であり、性格は小説によって真っ直ぐで素直ないい子か空気の読めないクソかの二択である。最近は非王道と言って展開がまた変わってくる話も多いが、今は置いておこう。 殆どの王道学園モノは彼の登場によって物語は始まるのだが___。 さて、ではなぜ俺がこんな話をしているのか。きっと薄ら気付いている方も居ただろう。 俺は、そっと遠い目で教室の前方に立つ毬藻頭を見つめた。 「オレ、皆瀬ハル!よろしくな……じゃなくて、よろしくお願いします!」 そう……その“彼”が、この学園にやって来たからだ。
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