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「掃除で月旅行ねえ……ぶっ、は?」
呟きながらボタンを押した飲み物をひとくち啜れば苦手なジュースだった。宣伝に気をとられ、間違えて買ってしまったようだ。
「はあ、ツイテないなあ」
すでに落ちている右肩と、正常な左肩も下げて僕はとぼとぼ帰路についた。
――♪
「え、なんで」
あれから数日、会社から電話がかかってきた。申請書と診断書もちゃんと提出したのに、なぜ今ごろになって。
「……はい、久野です」
「あ、久野さん? お休み中悪いね、いまいい?」
「はあ、なんでしょう」
いいわけないが、相手は人事部の係長だったのでとりあえず話だけ聞くことにした。もしかしてこのままクビだろうか。考えがぐるぐる回ると、せっかく治ってきたような肩がまた重くなってくる。
「月旅行に興味ない?」
「……へ?」
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