月面清掃大作戦

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「あー、あー、久野さん? 聞こえる?」  バッと起き上がると声は被せられたヘルメットから聞こえるようだった。 「はい、なんとか」 「え、ほんと? じゃあ成功だ! やった!」 「ええ」  ってことは失敗の恐れもあったんですね部長、僕は犬じゃないんですよ。まあ今は犬もダメですが。 「とにかくこれでゴミを利用した再生エネルギーの可能性と、月旅行が身近になるチャンスを我が社は手に入れたのだ。お手柄だ、久野さん。君を広報部長にしよう!」 「ええ?!」  わー、やったねー、おめでとう、と後ろからドンチャン騒いでいる声がする。「ありがとうございます」と礼を言えば「じゃあ頑張ってね」と通話を切られた。 「じゃあ、頑張ってね?」  どういうことだ。これ、どうやって帰るんだ。 「あ、あの、部長……?」  回線が切れている。プツッとボタンを押して繋げるとノリノリなサンバの音楽を背後に部長が出た。 「あの、ところでどうやって帰るのでしょう?」 「あちゃー。聞いてない?」  聞いてない、とは人事部係長から何か説明があったはずなのか。 「いいえ、なにも」 「帰ってくるには同じだけのエネルギーが必要さ!」  と、いうことは…… 「まあ、トラック四台分でしょ。月の重力は地球の六分の一だからあ……うーん、三年あれば大丈夫だね! 月の石は秘めた力があるって言うしー、酸素も四年は保つから!」 「冗談ですよね……?」 「前に行った連中が残したミキサーもあるはずだよ、探してごらん。食料とか軽くて必要なものはポンポン送れるからね! 大丈夫、君ならできる! アディオス!」  陽気に息をあげながら部長は通信を切ってしまった。
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