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銀灰色の瞳が、わずかに怒りを含んでいる。その様子にゾクゾクした。
「僕が好きなのは、君の笑顔だ。引っ越し作業の時に、失敗をした部下を励ますために見せたあの笑顔が、僕が世界で一番好きなものなんだ」
「……」
「あの笑顔を毎日、見ることができたら」
見蕩れてしまった陽斗の頬に、高梨が手を添えてくる。優しく撫でられて、くすぐったさに皮膚が粟立った。
「他には何もいらない」
そしてまた、口づけられる。
今度は熱く、深いキスだった。
「ヤリ捨てるなんて言って悪かった」
「……ん」
「あのときは、君がちっとも振り向いてくれなくて、平常心ではなかったんだ」
「うん……」
「今はもう、そんなこと欠片も思っていない。一生、そばにおいて離したくない」
「……ぅん……」
高梨が喋りながらキスを続ける。唇の合間から舌をさしこんで、陽斗の舌先をこすってくる。会話の途中で、何度も、ちゅ、くちゅ、という濡れた音がはさまれた。それに下肢が甘く疼いてくる。何日もかけて教えこまれた快楽が、全身を蕩けさせていく。発情しなくとも、高梨の愛情のこもった愛撫だけで、陽斗はいとも簡単に陥落するのだった。
「まいったな、したくなってきた」
高梨が声を掠れさせる。
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