1 最悪な出会い

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 T字路を右に曲がった家族を見送りつつ、陽斗は角を左に折れた。 「……冷蔵庫にまだ食材は残っていたし、光斗は食欲ないみたいだったな」  今夜は簡単にすますことにして、頭の中で献立を考えながら午後七時をすぎた住宅街を歩いていく。  駅から二十分ほど離れた、家々が少しまばらになった通りの一角に陽斗の家はあった。  小さな二階建ての家屋は、ブロック塀にかこまれ正面に表札のついた申しわけ程度の門がある。隣は雑木林と用水路だ。  その前に、木に隠れるようにして黒塗りの大きな車がとまっていることに気がついた。外国製の高級車だ。  ――なんだろう。あの車。  普段は見ない車種に、警戒感を覚える。  年頃のオメガふたりが住んでいる家は、不埒なアルファの標的になりやすい。だからひっそりと停まる車は目を引いた。  陽斗の家は金銭的に余裕がなく、警備会社には入っていなかった。もちろん防犯に関してはできる限りのことをしているし、気を抜くことはない。それに陽斗自身も子供のころから護身術を習っている。  チラチラそちらに視線を向けながら、陽斗は鉄製の門扉をくぐり抜けた。暗くて車の中はうかがえないが、動きはないようなのでどうやら思いすごしのようだ。ほっとして警戒をとく。ポストをあけて、たまっていた郵便物を取り出し、街灯の下で確認した。  登録している情報調査会社から、封書が届いている。厚生省認可のバース性専用マッチング会社で、定期的に番候補を紹介してくれるところだ。 「光斗宛てだけだな」  宛名を確認して呟いた。  アルファとオメガには、互いのフェロモン型がマッチングする『(つがい)』というものが存在する。  フェロモンには血液と同じように型がいくつかあり、その組みあわせで最良のものが番候補となるのだ。
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