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さらにその中から、最高に相性がいい相手が見つかれば、その人は『運命の番』と呼ばれるパートナーになる。運命の番はフェロモンだけでなく、出会った瞬間、外見も性格もひっくるめて、無条件に惹かれあうという。
その相手とめぐり会えれば一生幸せに暮らすことができるという科学的なデータもあり、昔は奇跡のような確率でしか遭遇できなかった運命の番も、情報化の整った今日では出会える可能性は1パーセントほどになっていた。
「まあ、俺には全く関係のないことだからなぁ」
封書を手に苦く微笑んだ陽斗は、玄関扉の鍵をあけるためにポケットから鍵を取り出した。
と、その瞬間、背後からいきなり誰かに抱きつかれた。
「――ッ」
ガシッと両腕を拘束されて、反射的にうめき声が出る。
しかし、驚いたたのは一瞬で、すぐに冷静に状況を見極めた。こんなときのために習得した護身術だ。
「……ハァハァ、待ってたよぅ。僕の運命の番ちゃん」
耳元で興奮した男の声がして、気持ち悪さにぞわりと鳥肌が立った。
「会いたかったぁ。光斗君」
どうやら後ろにいるのは興奮したアルファの男らしい。尻にいきりたった汚いものを押しつけられてゲンナリする。
「悪いけど、俺は光斗じゃない」
知らない声なので、きっと光斗を見初めたどこかの不埒な輩だろう。できる限り低い声で否定すると、男が動揺する。
「え? ……まじ?」
腕の力がゆるんだそのとき、陽斗は素早く腰を落とした。
男の拘束を抜け出し、身をひねって相手の足を払う。ぐらりと傾いだ身体を思い切り蹴りあげた。
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