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「――っってぇぇッ」
男が門の外まで転がっていく。陽斗は追いかけて、男の腹を踏みつけた。
「ギャアッ」
叫ぶ暴漢を、スマホを取り出して写真撮影する。
「キモいんだよ変態野郎! 警察を呼ぶぞ!」
そう怒鳴ると、男は立ちあがり、あたふたと逃げていった。
後ろ姿にフンと鼻を鳴らして、中指を突き立ててやる。すると離れた場所にとまってた車から、男がひとり急いでおりてきた。騒ぎを聞いて出てきたようだ。
「――」
男は、恐ろしく美しい容姿をしていた。背が高く、高級そうなスーツを着ていて、何より目を引いたのはその白金色の髪だった。
「……希少・アルファ」
思わず呟いたとき、全身にしびれるような悪寒が走った。
「っ――」
経験したことのない激しい感覚に襲われる。心臓がドクンと波打ち、電気を通されたかのような衝撃が背筋を走り抜けた。
目が離せずにいると、男のほうも陽斗をじっと凝視する。そうして、うっすらと微笑んだ。
男の白金髪は、ゆるいくせのあるショートミドルだった。長めの前髪は目にかかるほどで、その奥に銀灰色の瞳がある。高く真っ直ぐな鼻と、なだらかなラインを描く唇。完璧に整った容貌は人間離れしていて、まるでCGでも眺めているようなヘンな気分になる。――ああ、この前やっていたゲームにこんなキャラいたなあと頭のどこかでぼんやりと考えた。
「僕の出番はなしか」
男がよく通る澄んだ声で言う。
聞いているだけで耳がしびれるような美声だ。
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