最後の贈り物

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君がこれを読んでいるということは、私は死んだ、ということだね。もし何かの手違いで私がまだ生きているのに、君がこれを見つけたのなら、今すぐ見なかったことにして閉じてほしい。私が死んだら、改めてここに来てくれ。 君は、私の遺品から君宛ての手紙を見つけ、ここに来た。小説投稿サイトのURLと、アカウントを頼りに。 ここには、いくつかの小説が収められてある。自分で言うのもあれだが、たいして面白いわけではない。けれど、幾人かの人には読んでもらえた。星も頂いた。有難いことだ。 君は思っている。何が言いたいんだ、あんたの趣味が小説を書くことだってことは知ってる。今さら、何を? ってね。 君には、一度も読ませなかった。君も興味はなかったろう。 私は生きている間、おそらく君には何も遺すことができなかった。財産のことじゃない。思い出とか、情愛のことだ。仕事より優先するべきだったことを私は後回しにした。定年を迎えた頃には、君との間には大きな溝。 君は思っている。結論は、何だよ、と。 ここにある物語。 全部君のために書いた。君に伝えたかったことを書いた。君に泣いたり、怒ったり、笑ったりしてほしい。そう思って書いた。 私から君への、最後の贈り物だ。 今さらこんなことを言われても、読む気にはならないかもしれない。その時は、これを閉じて終わり、でいい。 もしも、読む気があるのなら、お願いがある。 読み終わったときは、ここにある物語をすべて削除してほしい。 そう。最後は、君だけのものだ。
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