近いようで遠く、遠いようで近い

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 智樹は朱莉が五歳の頃に、二軒隣の家に引っ越してきた。  同い年の子供を持ち、同世代という事もあってか両家は比較的速やかに仲良くなった。  引っ越しの挨拶に訪れた両親の陰に、ずっと隠れていた智樹の姿は朱莉の目に弱々しく映った。  実際、出会ったばかりの頃は朱莉の方が背が高かった。  何となくお姉さん気分になった朱莉は、隠れている智樹に向って声をかけた。 「こんにちは、何で隠れてるの?」 「えっ……」  絶句した智樹は、そのままカタカタと震え始めた。 「……あの?」  朱莉の言葉をきっかけに、ビクッと体を小さく跳ねさせた智樹は、母親の足の影に完全に隠れた。  そして母親の足にしがみついたまま泣き声を上げ始めた。  これが二人の交わした初めての会話。  「弱虫……」  そしてこの時から、智樹は朱莉の中でちび助智樹となった。
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