近いようで遠く、遠いようで近い

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 あっという間に十年以上が過ぎ、今やすっかりイケメン男子となった智樹。  だが、朱莉にとってはちび助智樹のまま止まっている。  それ故に、今の智樹の姿を素直に受け止める事にどうにも抵抗があった。 「素直じゃないかー」  そんな呟きと共に出たのは特大の白い息。  朱莉の明りの視線は視線は自然と隣に置いた鞄へと向いた。  教科書やノートに混じって入っている小さなプレゼント。  色々な思いが朱莉の中を駆け巡る。 「……捨てちゃおうかな」  ふと見れば、公園の片隅にはゴミ箱があった。木枠に金属製のリングがつけられたゴミ箱。中に放り込めば終わるのだ。買った事だって誰も知らない。最初から無かったことにするのは簡単だ……。  ゴミ箱を見つめたまま、朱莉は動かなかった。何度か腰を浮かそうとはしたが、結局彼女は立ち上がらなかった。もちろん、遠投でゴミ箱に放り込もうなんて挑戦もしなかった。  それどころか、彼女の目には涙が浮かんでいた。  捨てた後に訪れるであろう未来を思うと、あまりに悲しかった。  朱莉の中で固く閉めていたはずの蓋。  それが今、音を立てて開いた。  まるで炭酸の泡のように、色々と浮かび上がってきた。  プレゼントを買い続けていた理由。今日お下げにした理由。この炭酸飲料を買ってしまった理由。 「私、智樹の事好きなんだ……」  わざわざ口に出して確認してしまった思い。  沈めていた気持ちは、ついに水面へとその姿を現してしまった。  朱莉の頬をツゥッと涙が滑り落ちた。  
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