眠り姫、二度寝を決めた

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眠り姫、二度寝を決めた

「んうぅ…、ん…?ここは…?」長い眠りについていた姫が現代の科学技術によって目覚めた。この瞬間、第一研究室は歓声に包まれた。 「初めまして、姫様!私はこの研究所の所長です。アナタはようやく、ようやくお目覚めになられたのですよ!」姫は周りを見渡した。数十名の研究者が拍手し、姫の目覚めを祝福していた。 「それはどうもありがとうございます。ところで今は西暦何年ですか?」 「今ですか?今は二〇ニ一年です。推定ですが姫様は二千年くらいこの棺桶の中で仮死状態で眠っておられたのです!これは人類の神秘!奇跡なのです!どうか我々に研究の機会をお与え下さい!」 「研究?」 「ええ。何故姫様は二千年もの間この棺桶の中で仮死状態で生命を維持出来たのか、一体どんな方法で姫様を仮死状態にしたのか…、など他に二千年前の事や今となっては分かり得ない真実や当時の事など我々に教えていただきたい事が山ほどあるのです!」姫は少し考えた後に答えた。 「分かりました。しかし条件があります。私に少し自由な時間が欲しいのです」 「と、言いますと…?」 「今のこの時代の事を知りたいのです。誰か案内を頼めると有難いのですが…」所長は今後の為を思い、焦る気持ちを抑えて姫の要求を飲む事にした。 「わ、分かりました。では、ここの女性職員にを一人つけます」姫はその女性職員に案内されながら研究所を出て街へと向かった。そして数時間後、姫は研究所に戻ってきた。 「お疲れ様です!では早速ではありますが、姫様の健康診断や記録を取りたいと思いますので…」所長が待ちわびていた。堰を切ったように話し始めたが、姫はその話の途中に割り込んで話し始めた。 「申し訳ありませんが、私はあなた方現代人の研究には協力出来ません。」 「な、何故です⁈せっかく復活出来たのですよ!とてつもない時間と労力がアナタにはかけられているのです!」 「先程私は“今”を拝見させて頂きました。世界は私の想像を遥かに超える進歩と進化を遂げていました。  街は大きく美しくて人が大勢いて皆んなキレイでオシャレな格好をしていました。馬や馬車は車とかバイクなる素晴らしい物に変わっていたし食べ物もとても美味しかったです。  それにあれは凄かったです。テレビやインターネット。まさかあんな箱で人や動物が動いている姿や世界中が拝見出来るとは思いませんでした。  そしてインターネットで“現状”を教えていただきました。温暖化や自然破壊、世界情勢や戦争…、現代でも人は私がいた時代からそれほど進歩していなかったように思いました…。いや、むしろ退化しているとさえ感じました。  私はそんな人の醜さや恐ろしさが嫌でこの長い眠りにつく事にしたのです。人々が穏やかに平和に暮らす時代になれば私を目覚めさせてくれると信じていたからです。」そう言うと姫は棺桶に戻り自らの蓋を閉め再び眠り始めたのであった。次に目覚める時は平和な世界である事を夢見て。終
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