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令和3年 ♪
「――繋がった! 今どこにいますか?!」
けたたましい声で目覚めると、そこは愛車の運転席だった。助手席に置いたスマホからマネージャーの悲痛な叫びが聞こえてくる。
少女の美しい音色に、彼は体中を駆け巡る喜びで甘く感電したように倒れていた。
フロントガラスから田園と遠くに丘が見えるが数分前と違い、道に電柱が並んでいる。
(やっぱり夢か)
「……ごめん。迷子になった」
「今どこですか、何が見えますか?!」
「丘が見える」
「そこが会場です!」
数キロ走らせると彼は丘の麓に辿り着いた。フェス会場には屋台が並び、丘の頂上に特設ステージは祭殿のように物々しく彼を待っていた。
数時間前までいた収穫祭にそっくりだ、と吹き出した。その笑い声はしっかり彼の耳に届いていた。
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