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箱を開ける。
中身は暗くて見えない。
そんなはずはない。だって真上に蛍光灯があるんだから。じゃあなんで見えない?
そこまで考えたところで中の闇が外に出てきた。闇、そう闇だ。黒いという感じではなく、箱に入っているときから暗いという感じだった。
闇が外に漏れて、どんどん広がっていく。広がったところはもう見えない。そんな密度の何かが入っていたとは思えないくらいの重さしかなかったし、それならもう入っていたはずのないくらいの広がりを見せている。
「なんだ、これは」
つい、言葉が漏れる。と、一瞬闇が止まる。少し安心を覚えたその瞬間、闇が明確にこちらに向かってくる。なんで。
闇に包まれていく。いっそ一思いに全て包まれてしまえばいいものを、なぜか四肢の端からゆっくりと闇が包んでいく。怖がらせるためだろうか。そんなことを考える知能のあるものなのだろうか。
彼女はどうしてこれを渡してきたのか。彼女の顔を思い出す。思い出す、思い出そうとする。思い出せない。そういえば彼女は誰だったか。よく知っている人だと思ったのだが。名前も顔も思い出せない。それに恐怖を覚えた瞬間に闇が全てを覆った。
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