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豹 バオ
「オマエ‥施設にはどれくらい居たんだ?
その様子じゃ追ン出されたってトコか(笑)」
「どれ位も‥‥一年居たかなぁ‥。
ノーナシ指導員たちの目を盗んで抜け出すなんてチョロいッスよ(笑)
…あんなブタ箱、いつまでもいられるもんか‥」
バオはそう吐き捨て、パンを口いっぱいに詰め込んだ。
「少なくとも衣食住の心配はなかったろうに…」
「‥‥あそこのメシを一度食ってみな…家畜の餌のがまだマシさ。
僅か茶碗一杯のクッソ不味い芋粥じゃ身体なんてもたねぇよ。
授業の前後にワケわかんねぇ主体思想の講義、それ以外は農場に出されて日が暮れる迄労働奉仕…自由時間なんてありゃしない。
規律と監視‥折檻の毎日…まるで牢獄だよ」
「フッ‥野良犬みたいな地下暮らしの方が日々のメシよりマシだって?」
「路上生活は悪くなかったぜ。
工場近くのマンホールはあったけぇもん…石炭ケチって凍えることねぇからなァ。
なンせ変な規則が無くて自由だ☆
上級特区の残飯ったらお楽しみだぜ!
滋養豊富栄養満点豪華ケンランアメアラレ!(笑)」
この世は廃棄物すらもあからさまな格差を叩きつける。
己の価値を‥人間たる意味を闇に葬る社会、搾取される側の屈辱と憤りを皮肉におどけてみせる彼の瞳の奥は、
この世の不条理を冷ややかに侮蔑していた。
彼は語ることを止めなかった。
「指導員って連中がコレまたクソばっかッ!
食料・備品の横流しに経費水増し着服あたりまえ。
教育的制裁?ケッ‥
やれ動作が遅い、目つきが悪いって…
てめぇ等の気分次第で殴るは蹴るは‥泡でも噴かなきゃ終わりゃしねぇ。
…寒波の夜、点呼の声が小さいと野晒しにされて凍傷で指や耳の欠けた連中もいたよ‥。
掃除が甘いと畑に埋められてションベンかけられンだ。
あのサ‥
オレ達が靴を一足支給して貰う為に、奴等のウス汚ねぇチンポコ何本しゃぶると思う?
…変態野郎に‥尻の穴が締まらなくなるまでヤりまくられた挙げ句…溜め池に浮かんでた下級生だって‥」
「もういい‥‥‥‥‥。
‥‥フゥ‥
おまえ、父親は?
顔とか名前、覚えてないの?」
「知らねー、興味ない。
生まれたときから母さんしかいなかった。
そンで困ることなんてなかったし。
オレの母さんは人気の歌手だったんだぜ☆
‥オレが‥6つの誕生日だった。
その日はステージが休みで、オレの為に、普段はなかなか手に入らない鶏を料理してくれてた…。
いきなりやってきた秘密警察に、母さんは無理矢理連行されて‥‥‥それっきり…
役人は俺を孤児院に放り込んだ。
孤児院で何日か経った頃、消灯前に母さんが心臓病で死んだと聞かされた。
オレ、もぅ‥いったい何がどうなってンのか‥‥
だって、母さんは心臓の持病なんてなかったんだ!
遺体には会わせても貰えない、何の説明も無いんだ‥。
いつどこに葬られたのかさえもわからない…
‥‥‥‥‥殺された…
オレはそう思った‥
‥‥‥母さん‥‥長沢の爺さんに気に入られてたから…」
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