第七話

75/77
前へ
/457ページ
次へ
 その後で、デザートの焼きプリンと、温かいロイヤルミルクティーを用意してくれたシオリ母さんの仕草を、コトリちゃんはずっと見ていた。 まるで、ひとときの瞬間も逃さずに目に焼き付けるように。 コトリちゃんは、まずはロイヤルミルクティーを口に含んで、ほぅっと優しいため息をついてから、焼きプリンを大切な宝石を見るように眺めてから、スプーンでそっと掬って、大切に口に運んでいた。 「お、お母さん、料理が上手なんだね。 私の今までで、一番幸せな時間だよ。 ありがとう。 私、こんな日が来るなんて思っていなかった。 ・・また、来てもいい?」 そう、コトリちゃんは言った。 その言葉で、私の涙腺は決壊していた。 当のシオリ母さんは、両目に涙を溜めて、何度も何度も頷いていた。 「今日の演奏素晴らしかった。 コトリもユウカも、とてもとても素晴らしかった。」 そう言った後で、 「コトリ・・ ラジオから聴こえてくるあなたの音を聴いて、あの時にテレビが映し出していたあなたの姿を観る度に、会いたい想いが募っていた・・。 私は一度だってあなたを忘れたことなんてない。 でも、こんな私があなたに会う資格はない。 ずっとそう思ってた。 それなのに、あなたはこうやって会いに来てくれた。」
/457ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加