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その後で、デザートの焼きプリンと、温かいロイヤルミルクティーを用意してくれたシオリ母さんの仕草を、コトリちゃんはずっと見ていた。
まるで、ひとときの瞬間も逃さずに目に焼き付けるように。
コトリちゃんは、まずはロイヤルミルクティーを口に含んで、ほぅっと優しいため息をついてから、焼きプリンを大切な宝石を見るように眺めてから、スプーンでそっと掬って、大切に口に運んでいた。
「お、お母さん、料理が上手なんだね。
私の今までで、一番幸せな時間だよ。
ありがとう。
私、こんな日が来るなんて思っていなかった。
・・また、来てもいい?」
そう、コトリちゃんは言った。
その言葉で、私の涙腺は決壊していた。
当のシオリ母さんは、両目に涙を溜めて、何度も何度も頷いていた。
「今日の演奏素晴らしかった。
コトリもユウカも、とてもとても素晴らしかった。」
そう言った後で、
「コトリ・・
ラジオから聴こえてくるあなたの音を聴いて、あの時にテレビが映し出していたあなたの姿を観る度に、会いたい想いが募っていた・・。
私は一度だってあなたを忘れたことなんてない。
でも、こんな私があなたに会う資格はない。
ずっとそう思ってた。
それなのに、あなたはこうやって会いに来てくれた。」
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