第一話

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・・はぁ・・。 私も東京に行きたい。 東京に行って、あのT音楽大学のキャンパスの入り口にある、気難しい顔をしたベートーベンの胸像に毎日挨拶して暮らしたい・・。 ・・はぁ・・。 ・・・・ いきなり、おでこにピシッ!!と言う軽い衝撃が入って、私は我に返った。 「イタッ!!」 そう言っておでこを両手で押さえてると、デコピンしたての右手を掲げて、 「リンコ! 考えても仕方がないことで、いつまでも悩まない! ちゃんと追い付けば良いじゃん! そんなんじゃ、茅葺(カヤブキ)先輩だって安心できないでしょ?」 そう言ったのは、私の親友のユウカ(橘 優花(タチバナ ユウカ))だった。 茅葺先輩というのは、私の彼氏でもある、私たちの二つ上の茅葺 光治(カヤブキ コウジ)さんのことだ。 華奢でオンナ顔、そのくせトレッキングが大好きで、T音楽大学の管楽器科の一回生。 それがコウジさんだ。 さすがユウカ。 私が何を考えているのかは、お見通しのようだ。
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