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未知との遭遇
ファスナーが脇のあたりを出発点として真上に進んでいく。
「痛いって」
手が止まった。腕と同じくらい白い胴体がぐにゃっとうねっていた。
「ちょっと、髪! 髪が、髪、痛いって。ちょっと手伝って」
はやくはやくと腕を上下に振られるが手伝うわけがない。格好が謎すぎるのだ。この隙に逃げるため、一歩後ずさると「柿原ゆかり」と呼ばれた。
「は、はい」
思わず返事をしてしまった。わたしには誰だか検討もつかなかった。
「早く来て」
といいながら駆け寄ってきた。闘牛のような勢いでわたしに向かってくる。さらに恐怖を感じ、身をひるがえして走り出そうとした。
「とれた!」
転びそうになりなるも右足で踏ん張り耐えた。ばっと振り返ると、すでにファスナーは開け放たれている。
沢井さんだった。
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