続く決闘

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続く決闘

 ──帝国軍とコトをかまえて4日目の朝が来た。 ──なんか1年くらい経った気がするな── ──おはよ、クッキー。珍しいわね寝るだなんて──  帝国軍とかまえてまる3日が過ぎ、そのあいだ不眠不休だった。肉体的な疲労はないし、精霊的な存在なので疲れは無いはずだった。だがそれなりに精神的に疲労していたらしい。 ──疲れてると変な夢を見るって言うけど、ホントだな──  本体である世界樹の精霊空間でアディとふたりっきりになるのは久しぶりだ。ついつい気が緩む。 ──どんな夢を見たの── ──う〜んと、主役交代じゃないぞとか、クライマックス前に読み直してるぞとか、辻褄合わせで修正してたとか、だから更新遅れたぞ、とか……── ──なにそれ、意味わかんない── ──だよなぁ。変な夢だった。それより外はどうなっているんだ── ──朝から長蛇の列よ。懲りない連中ね──  精霊空間から通常空間に精霊体のまま出て、[世界樹の森]の南側を望む。この3日で大きく様変わりしてしまった。もともと大草原で、細いけもの道から往来できる街道になりつつある道があっただけなのに、[世界樹の森]と大草原の際にはグリーン・ウォールという複合型防御壁が東西に築かれ、いや、生やされている。  そのさらに南側には簡単な円形闘技場があり、昨日はそこで帝国軍の傭兵どもと決闘に明け暮れていた。 ──草刈りやらされるよりこっちの方がマシだ。ってところかな。まあオレの目的である[帝国軍が諦めて撤退]の一助になるからいいが──  そこまで考えて、ふと疑問を持つ。本当にそれだけなのか。 ──どうしたの? ──  アディが何かあったのと顔をのぞき込む。 ──なんでもない。ちょっとペッターと話してくるからアディは連中を見張っていてくれ──  それだけ言うと、[世界樹の森]の中心地である[聖域庭園]の下にある地下空洞に向かう。  そしてオレのもうひとつの身体ともいえる世界樹製駆体四号(マリオネット4)に憑依し、地下空洞の片隅にある研究室に入り、これを造った自称天才技術者のペッターに会う。 「ペッター、起きてるか」 「今から寝るところだ。なんかあったのか」  椅子に座り大あくびしながら返事をする。  技術者特有の”集中したら寝食を忘れる“タイプなので、オレなりにペッターの健康には気を使っているが、それても不健康な生活になる。 「いや、今さらなんだか帝国軍の動きをどう思ってるのかなぁって」 「なんか気になったのか」 「オレが時間稼ぎをするのは理由がある。諦めて撤退してもらうためだ。だが帝国軍としてはそれにつきあうことはないだろう。なのに傭兵との決闘を今日もやるつもりらしい、どう思う」 「そりゃあ……持久戦を選んだか、もしくは何かを待ってるかだな」 「何かって?」 「補給かそれとも……」  そこまで言うとくるりと椅子ごと回り、ペッターは研究室にある自分用の樹液モニターに向かう。そして菌糸コンピューターにある記録を見返す。そこにはこの3日間の戦闘データが記録されている。 「……ふぅん、どうやら挟撃作戦を選んだようだな」 「どういうこと」 「ほらここ。部隊の数が少なくなっている」  初日の映像と今朝の映像を並べて樹液モニターに映す。なるほど全体数が減っている感じがする。 「こっちが昨日の朝と夕方の映像。ほらここで減っている。ということは昨日1日かけて部隊はどこかへ移動しているということだろう」 「本国に戻ったという可能性は」 「無い、とは言わんが、朝早くから動いたならそれなりの目的があってのことだろう。ひょっとしたら補給のためかもしれんが、少なくとも挟撃作戦の可能性はあるんだ。警戒しておいて損はないだろう」 「そうだな。アディ、ミツハとヨツハに連絡してくれ。旧街道に向けてカメラツタを生やしておくようにと」  [世界樹の森]の東端からさらに草原を経て、すり鉢の端のような峰から旧街道を見下ろすところにカメラツタが設置される。  そこからあぜ道のような旧街道の南を映すと、遠くの方に土埃が巻き上がっているのが見えた。おそらくあれが別働隊だろう。 「まる1日であの辺りか。これじゃたしかに時間稼ぎしたいだろうな」  そう思っていたらアディから連絡が入る。 ──クッキー、アイツ等わめき出したわよ。もうあたしがやっていい? ──  おっと、しびれを切らしはじめたか。 「いいよ、オレがいく。ペッター、あとは頼んだ」 「あの距離なら大丈夫だろ。とりあえず寝るからな」  そうだな。1日であの辺りならあと2日くらいかかるかな。  カーキ=ツバタのユーリも気になるけど、たぶん力になれそうにもないし、ノマドと[はじまりの村]の避難民もアンナに任せるしかない。どちらにも優秀なヒトハがサポートしてくれるようだし、たぶん大丈夫だろう。  さて、ならば今日も決闘して時間と経験値を稼ぎますか。
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