亡霊の怨念

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スタットを暗殺した当時の指揮者であるドラゴンを討ち取った昂り、祖国を自らの手で破壊している罪悪感、そしてこれから国を取り戻す為に更に多くを破壊する覚悟。 そんな様々な感情がロアの叫びには混じっていた。 やがて真ソレイユ城内にも多くの火が回り、中を移動するには困難な状況だったこともあり、ロアは飛行して脱出した。 外に出ると各方面から"味方"の軍が城を取り囲んでいた。 「おーい!やったのか!?ロア!」 真下の方から声が聞こえた。 1人の兵士がロアを呼んだようだ。 「トーマス…!早いじゃないか、てっきりもう死んでると思ったよ」 「馬鹿言うな!何のために1年半も生き延びたと思ってんだ!それよかお前、拠点にするから城の破壊は最小限にしろって話だっただろ!何で上半分吹っ飛ばしてんだよ!?」 「うるさい!俺に指図をするな!」 隊長と部下である関係以前に"同期"である2人は作戦中でも相変わらずどこか罵り合いのような会話をする。 「全くだぞ!それに"あの技"は安易に使うなと言ったはずだ!味方を巻き込む気か!」 少し遅れてやってきたローガンが大声で言った。 「あんたの指導不足じゃないんすか?"アレ"は身体に叩き込まないと言うこと聞かないですよ?」 「同感ですわ。これでは作戦が成功したと言っていいか判断が難しいです」 そうローガンに言いながら現れたのはスプリット・カフィとローズ・ローザ。共に旧グリーフ王国の隊長だ。 その後ろには副隊長を含めた当時からの部下たちを引き連れている。 「むむぅ…」 ロアの面倒見係を引き受けていたローガンは2人の正論に口籠る。 そんなローガンをある男が後ろから肩を叩いて現れた。 「まぁある意味で予定通りだろう。実力のある部下は御しきるのが難しいからな。奇襲で将軍を1人落とせたことが重要だ」 「レインボルト殿…」 彼の名はロベルト・レインボルト。 ラストアーマーを着用した『最初の5人』の1人であり、真インセンス帝国の皇将軍、シャイン・パラディンとかつて肩を並べていた男だ。 更に『グリーフ・オブ・グリーン』の異名を持っていたスタットの師でもある。 レインボルトは未だ飛行しているロアを見上げると小さく呟いた。 「ろくに言うことを聞かず、1人で何でもしようとする。スタットにそっくりだよ、君は」
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