メリークリスマスと新幹線と

｢はあー？　何でだよ。イリュージョンの忘年会だぞ｣
　寧ろ顔出さないのはどうかってレベルで、イリュージョンには入り込んでる。イリュージョンのボーカルは玲次だけど、デモの仮歌を入れるのは僕だし、レコーディングの時にコーラスで参加もしてるし、歌詞の直しなんかもする時がある。
｢行かないって｣
　これがクリスマスパーティって言われたら微妙に気が済んだかもしれないけど、忘年会って。クリスマスイブに忘年会って。
　ありえない。この日付にこだわらない設定の仕方は玲次の発案に違いない。
｢マジかよ、ありえねぇだろ｣
　他のサポートメンバーやスタッフの手前、僕が顔出さないのはちょっと気まずいかもだけど、これどうせ朝までコースじゃん。僕、明日は平日だから仕事あるじゃん。途中で帰らなきゃじゃん。
　クリスマスイブのクの字もなく？　一人で帰れってこと？
　ありえないのはどっちだよ！
｢忘年会行かないし、ライブも行かないから｣
｢ああ？　ふざけんなよ。ちゃんと来いよ｣
｢行かない。帰る｣
｢どこ帰るんだよ｣
　僕は黙って財布とスマホをポケットに突っ込み、コートを羽織って家を出た。