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うわ、もうめっちゃ怒ってるよ。自分のことで頭いっぱいで、それを忘れてた。帰ろう。もう帰ろう。この人たち、付き合ってまだ1年目だった。
「りゅうがこっち帰ってくる時あったら、うちに呼ぼうって思ってたけど、今?」
「ごめんなさい」
暫しの沈黙の後、しおんは急に声を立てて笑い出した。
「あー、面白かった! ほんともう、面白いね、二人とも!」
「え」
落差についていけず、きょとんとしてしまう。
「逆に、何十年って付き合ってて、今更そんなことで喧嘩できるのすごいじゃん」
「えー?」
「いつまでも新鮮だねぇ、りゅう達は!」
「いや寧ろ枯れてるよ。老夫婦だよ」
「全っ然そんなことないじゃん」
しおんは散々笑って、目尻にたまった涙を拭きながら冷めかけたコーヒーを飲む。
「ま、ずっと黙って溜めてたんでしょ、そのイライラを。それがたまたま今日爆発しただけで」
「うーん…まあ、そうなのかな」
「今頃、玲次さんどんな顔してるのかなー。えーと? そろそろライブハウス着くくらいかなぁ?」
しおんは楽しそうに時計を見る。そろそろ14時。玲次は今日の会場のテイクワンに入る頃だろう。
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