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玲次も怒ってんのかなぁ。流石にもう周りには当たったりしない大人になったから、何事もない顔してるんだろうけど。
僕が来ないのも、適当にごまかすだろうな。
「そうだねー」
「今日どこなの?」
「テイクワン。渋谷」
「渋谷ね。何時から?」
「18時開演」
しおんはスマホで何か検索する。
「まだ大丈夫だね。お昼食べた?」
ああ、ここから渋谷までの時間を検索してたんだ。
「まだ」
そう答えると、キッチンに立って行って冷蔵庫を覗いている。
「サンドイッチとか食べる?」
「あ、うん」
「じゃ、ちょっと待ってて。適当なヤツだけど」
彼は冷蔵庫からあれこれと取り出して支度を始める。
「押し掛けといてごめん」
「いーのいーの。相変わらず可愛いなぁ」
昔から、しおんは僕たちの仲を「可愛い」と言う。何が「可愛い」のか、僕には今でもよく分からないけど。
「何で素直に、一緒にクリスマスしたかったなーって、言えないのぉ?」
「言っても無駄だもん、あいつ」
返事は多分「バーカ」か「はあ?」の二択なのは目に見えてるもんね。
44にもなって、あいつは成長してない。素直になれない僕も成長してないか。
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